「お久しぶりです。またお願いします」
もの静かではあるが、大きな目が印象的な市川在住のKさんだ。
1年ぶりの再会である。その間私は白金台に転院したのだが、有難いことに、Kさんは何百何千の歯医者をとおりこし、私のクリニックに来ていただいたのだ。大変うれしい。歯医者冥利につきるものだ。
当面の問題点を解決した後、私は下のCT写真を説明させていただいた。
- この歯は、今症状がなくても必ず将来症状がでる。その時は抜歯以外にない。
- 抜歯後インプラントを希望するなら、今インプラントを入れた方が良い。
- その理由は、症状がでてくるまでに、骨が炎症によって吸収され、骨量が減ってしまう。
そのため、インプラントのサイズが小さいものに限定されてしまうから。
せっかく遠方より来院してくれるのだから、できるだけ予後の良い治療を提供したい。患者さんにはできるだけ歯の問題で煩わせたくない。私は、誤解を恐れず、提案することにしている。
歯を支えている骨がなくなれば、歯は動き,抜く以外になくなることは、多くの方々にとって常識だと思うが、もっと重要なことは、抜いた後もその周辺の骨の吸収は終わらず、時間とともに骨量が減っていく(廃用性委縮)ということは、まだ常識になっていないのではないかと思う。勿論、人生の最後まで、そのままにしておくと決意しているのならいいのだが、歯を作ろうとなると、インプラントにするにも、入れ歯を作るにも、ともに難しい条件となるということです。
条件が悪ければ当然ながら、治療も難しくなり、予後も不安定になり、かつ治療費もかかる。問題点を先のばす理由を日常生活に見つけることは容易ですが、今やろうと決意するには知性と信頼が必要でしょう。
平成24年3月16日
Kさんは、即時インプラントの手術を行いました。
3月23日
抜糸を行いました。予後は順調です。