死んでしまった歯でも、体のなかで歯として使えるようにする技術を「根管治療」といいます。これは、画期的な治療技術だと思います。
体の中で、死んだ組織が、生きていた時とおなじように機能できるものは「歯」以外ありません。「ゾンビ」ならできるかもしれませんが。
つまり、歯科技術はミラクルなのです。
歯科の保険治療に、勿論「根管治療」も含まれています。簡単に治療のシステムを紹介します。
根管数によって、点数が決められています。1根管、2根管、3根管と言った具合です。1根管は前歯、2根管は主に小臼歯、3根管は大臼歯です。
単純に、1根管の成功率は、どのくらいだと上手な先生となるのでしようか?
「成功」という定義は、保険的な常識なら最少2年、妥当にみれば5年、目いっぱいの責任感でとらえれば10年といったところでしょうか。
1根管の成功率を、どのくらに設定すればいいでしょうか?
どんな名医も100%はないとすれば、どのくらいが妥当でしょうか。
どんなことも8割できれば上等でしょうか。
1根管の成功率が80%なら、3根管(大臼歯)ともに成功する確率はなんと、52.2%となります。2本に1本は予後不良つまり抜歯となるわけです。
さらに、大臼歯の根管は、前歯の根管のように素直ではありません。曲がっているのが普通です。奥の歯なので、器具がうまく入らない場合もあります。従って、前歯の1根管より大臼歯の根管のほうが治療が難しい、難易度がさらに上がるわけです。
保険の治療費をみてみます。
数が増えれば、単純に手間も増えるのが普通です。3根管は、1根管の少なくとも3倍の治療費になっていないとおかしいでしょう。
逆に、青汁1パックより。3パックまとめて買った方が割り安になることも、よく経験します。
厚生労働省は、治療費について、青汁と同じだと考えているようです。
3根管治療すると、1根管×3の22%引きとなります。
患者さんにとって、実にやさしい制度となっているわけです。
ただ、2本大臼歯を治療すると、数年で1本は抜歯になるわけですから、また治療費はかかるという「おまけ」がついてきます。
志をもち歯医者になって、成功率アップすべく、技術を研鑽してきた真面目な歯科医達も、いっこうに変わらないこの保険制度に疲弊していくのです。
治療結果を重要視する医療には、現行の保険制度は不向きな時代になってきたように思います。