根管治療の実際

この方は、右下第一大臼歯を治療してほしいということでした。症状は全くありません。歯根部分の歯肉がずいぶん退縮しています。ポケットは2ミリ程と正常です。

ではどうして、こんなに歯肉退縮をおこしてしまったのでしょうか?

かみあわせによって、この歯に過度に負荷がかかっているのではないか(咬合性外傷)とおもわれます。事実この方は、左上顎は小臼歯、大臼歯がありません。つまり、左右で同じように咬めません。このことが1本の歯に負担をしいているのです。

レントゲンでは、根の治療は、それなりに治療されています。しかしながら、根尖部には黒くなっているところがあります(根尖病巣)。

根尖病巣などの、慢性の感染病巣が、体に対していろいろな障害をおこさせることはよく知られています。例えば、心臓の弁膜疾患であるとか、腎疾患であるとか、糖尿病であるとか、低体重の胎児を生みやすいとか、その他多方面に影響があるといわれています。CT写真では、はっきりとした根尖病巣がありましたが、この原因はどこにあるのでしょうか、拡大してみてみましょう。

写真の白い点は、根管を治療した跡です。3つ見えます。しかしよくみると、治療されていないが、もう一つあるように思えます。つまりこの歯は4根管だったわけです。4番目の根管治療の不備が、根尖病巣の主な原因であったように思われます。

 

下顎第一大臼歯のほとんどは3根管であり、保険制度も3根管を前提につくられています。4番目の根管は発現頻度も低く、しかも走行もいろいろあり大変やっかいなものです。この見つけにくいしかも治療しにくい4番目の根管をひつこく治療しても、保険制度では250円の治療費の差にしかなりません。1根管の治療不備が歯自体の寿命を決定してしまうのにです。

 

治療開始です。患歯だけを孤立させることによって、唾液にまみれにならず、清潔に治療をおこなうことができます。ちょっとピンボケですが、4根管だということがわかってもらえると思います。無事治療が終了いたしました。なかなかスムーズにいかない場合もありますが、2、3回で治療は終了します。

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