「あのー、ホームページで見たのですが、そちらでは線維腫をとってくれますか?」と女性の不安気な声が受話器からきこえてきた.
「はい、おとりしておりますが。どういたしました。」余裕のある、落ち着いた当クリニックの受付が答えた.
Aさんは松戸在住の方で、近くの歯医者さんで、舌側縁にできた小さなできものを線維腫と診断されたそうだ。当然とった方が良いということで、大学病院口腔外科を紹介されました。
Aさんは大変な歯科恐怖症。大学病院にいくというだけで精神的にまいってしまう。そこで待っているだけで顔面蒼白となり倒れてしまいかねない。見かねたAさんの御主人はネットで、開業医で、線維腫の取れるところはないかと3日間調べたところ、私のクリニックにぶつかったということです。
確かに、大学病院は時間がかかる。忙しい日々におわれている身では、おっくうになるのも当然でしょう。事実その後Aさんの治療をしてわかったのですが、実にAさんは忙しい。時間をやりくりして予約時間にあわただしくまにあわせているといった風でした。しかしAさんの大学病院恐怖症は、時間がかかるという理由だけではないようです。大学病院がもっている、一種威圧的な雰囲気のため、意志疎通がままならないまま治療される恐怖のようでした。それは、Aさんの自己防衛でもあるのでしょうか。
Aさんは技術がある程度、担保されるのなら、face to faceでもっとコンビーニアントに治療を受けたいということだったのでしょう。
Aさんの舌をみていただきましょう。
いちべつしただけで、どうも線維腫ではなさそうです。ちょと小さいですネ。勿論、大きさに関係なく、Aさんは気になってしょうがないでしょう。
線維腫というのは、コラーゲン線維と線維芽細胞によってできているものです。一方乳頭腫というのは、上皮の細胞(重層扁平上皮)からできています。いずれも、刺激や炎症があり、その修復の過程でできたものです。勿論、良性腫瘍ですから、全く安心なものです。
Aさんにまず痛くない、10秒程度で終わると確約しました。それでもAさんはこわがっていました。
腫瘍に表面麻酔をしました。待つこと3分。半導体レーザーメスで切除しました。
Aさんに、「本当に全く痛くなかったでしょう」と聞くと「痛くなかった」とかぼそく答えてくれました。
半導体レーザーメスは実にすばらしいです。歯科領域でレーザーというと、炭酸ガスレーザーやヤグレーザーが一般的です。まだ半導体レーザーメスは全くといって広まってはいません。しかし大変簡便で、周囲組織に対するダメージが少ない。結果痛くなくかつ治癒が良いということになります。私のクリニックでは、おもに歯槽膿漏の治療に使っています。
切除した腫瘍は病理に出しました。開業医でも当然ながら、病理にだせます。ご安心ください。
次は線維腫の方です。患者さんは33才女性の方です。1年前から気づいたそうです。咬んでしまい出血したこともあるそうです。
この方の場合は、メスで切り取り、1糸縫合しました。
何でもなくてよかったですネ。よかったです。