喜びは遠方より来る(B-1)

「らちがあかないので、先生のところに来ました」

札幌のBさんが受付に立っていました。スーと背筋を伸ばし、顔に笑み絶やさず冗談好きのBさんは現在84才です。

「昔先生に治してもらった歯が、ここ最近調子が悪くなりましてね、ちょっとくさいんです。北大に行ったんですよ。何回いっても、あーでもない、こーでもないと、たくさんの先生が回りをかこんでいるだけで、一向にらちがあかないんです。そして、結局全部やりかえる以外ないというんです。私にしてみれば、残されている人生もそう長くはないんですから、応急的でいいって言ってるんですけど、そうすると入れ歯しかないというし。先生なんとかならないものでしょうか?」

Bさんの顔はあくまでも柔和ですが、なにか確信に満ちているようにも見えました。こう言ったなら、きっと先生は反論せず、希望通りに治すだろう。いや治しなさいといわんばかりのオーラをはなっていました。

レントゲンをとることにしました。

 

レントゲンに写っているインプラントは、私が、平成8年に入れたものです。そして上下ともフルブリッジにしました。Bさんは札幌在住の方ですから、治療の度ごとに市川の私の診療所(現在は白金台に転院している)にかよっていただきました。当時、Bさんの御嬢さんが市川に住んでいらしゃいましたが、大変だっただろうと思っております。

 

現在でもインプラントは全くと言っていいほど、問題はありません。16年ほどもっていることになります。問題なのは、残っている自分の歯です。赤矢印で示した歯が破壊されており、左犬歯のところでブリッジが折れていました。口臭の原因は、これらぐしゃぐしゃになった歯でしょう。おれているため、左側のブリッジが動くようになっていました。

左第一大臼歯を抜歯し、離断した左側のブリッジをはずしました。腐食しくずれてしまった左側の犬歯と第二大臼歯を補強しなんとかブリッジを固定させることができました。

 

しかしこれはあくまでも応急処置で、このままでいいということではないこと。入れ歯はいやだということであれば、やはりインプラントを追加補充する必要があることを説明いたしました。

「北大の若い先生に見せてあげなくちゃいかんな」と言って、満面笑みをたたえながらBさんは、札幌に帰って行かれました。

それから半年もたった、今年5月のある日、Bさんから電話があり、6月にインプラント手術をすることになったのです。

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